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秦戦紀

  • Sample01
     歴史大作漫画「キングダム」全感想記事を戦争毎にまとめた目次録。リンクを張る場合はコメント欄に一言あるように。
     ◆目次解説並後書 
     

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2019年3月22日 (金)

五百二十

#520「火蓋を切る」 緊張渦巻く武の平原

 

 

 信が荒れていた。 原因は自軍の布陣にあった。

 中央軍に置くなら前か横に並べるべきだ、奥の最後尾に縦列にならぶ自軍に信は王翦将軍の差配に当たり散らしていた。 ここからでは戦場が見えないし、俺らが李牧が怖くて隠れているみてぇじゃねえかと吼え続ける。
 信の言葉を聞いた貂は気づいた。 王翦将軍はうちを敵から隠すために最後尾にしたのではと。ならばと貂が将軍の意図を読もうとする。 

 そこへ羌瘣がやってくる。 左側に注意を払った方がいいと言う。 どう考えてもこの戦いは左側から動くと。 貂も全く同感だった。 この秦軍の全布陣では飛信隊の配置よりも…、

 左翼の方があまりに深刻な状況……!! 

趙軍本陣も偵察の報告から左翼が薄すぎる事に驚きが広がっていた。 金毛が驚く。堯雲が慎重な男だと思っておりましたが意外と大胆ですねと総大将に言う。李牧も同感で、開戦前から仕掛けてくることは意中の外だった。

戦はそれぞれ戦いやすい局面から始めるのが常である。そういう意味で
秦軍左翼の五〇〇〇という数字は極端に少なくあからさまな挑発的布陣、
‟さっさと左翼から攻めて来い”という王翦から李牧へのメッセージである。

 李牧はここで二択を迫られることになった。

王翦の挑発通り秦軍左翼五千に紀彗軍で構成される趙右軍三万をぶつけに行くかor
王翦の怪しい誘いに乗らずそれ以外の所から始めるか――

熟考した李牧はカイネに紀彗へ伝令を飛ばした。 全軍前進秦左翼五千を壊滅せよと!応える紀彗は馬呈を呼ぶ。馬呈が兵達に号令を下した。

李牧の選択は前者であった。

趙右翼紀彗軍三万全軍前進 これが王翦軍対李牧軍開戦の号令であった

 秦左翼楽華隊 斥候から敵右翼三万全軍で前進と報告を受ける。 部下達がやはりまともに来るかと不安を抱きつつ、蒙恬を見る。 対する蒙恬はだったら仕方ない、こっちも行こうかと高台から降りる。
 居残る爺が蒙恬様ご武運をと祈りを捧げる。蒙恬はいつも通り、また後で会おうと軽やかに挨拶をする。 それでも爺がたまらずに下りようとした陸仙を引き留める。

 本来ならば儂が蒙恬様の傍にあっていざという時に身体を盾として御身を守るべきだが、この老体では主力の騎馬隊の脚について行けぬこの無念をお前に託すぞと陸仙に爺は念を押す。 分かってますから矛をどけなさいと陸仙が言い返す。
 陸仙お前は力があるくせに欲浅く控え目で時々イラっとするが頼りになると爺は話す。褒めてんすかと陸仙は半ば呆れる。 
 槍の腕とて実はあの王賁にも引けは取らぬと爺は言うが、陸仙は流石にそれはないと否定する。

 蒙恬様を頼むぞと爺は陸仙に託す。 分かりましたと答える陸仙だが、爺副官にいつまでも危なっかしい‟若君”の認識は改めた方がいいと忠告する。
 敵三万に五千で挑ませる王翦将軍の無茶ぶりにも全く動じていない。きっと蒙恬様はもう大将軍達と同じ目線で戦が見えてますよと。

 敵に向かう陸仙の忠告を受けた爺。 そんなことは言われなくても分かっていた。だがそれでも儂にとってはと幼き頃の蒙恬との出来事を思い浮かべる。
 木の枝に立つ若様は飛び跳ねて遊ぶ。木の下は崖で落ちると危ないと爺は止めさせようとした。案の定、枝が折れ若が落ちて肝が冷えたのだった。。。
 爺は思う。どんなに成長されても儂にとってはいつまでもその身を心配して止まぬ‟若様”のままなのだった。

 前進する紀彗軍。 馬呈が戦場の半ばまで来たので城主に判断を仰ぐ。斥候から敵は最初の布陣から動いていないと報告が入る。 王翦は馬鹿なの?このまま右の前線は本陣近くまで押し込んじまうぞと馬呈が言う。 

 馬呈の言葉で紀彗は全軍停止を命じ、様子を見ることにする。尹圭の騎馬一千を前進させて敵の出方を図らせる。 そこへ前線の物見から報告がやってきた。
 馬呈が敵が動いたかと問うが、敵の左翼がいつの間にか半分になったと伝える。馬呈が消えた半分は何処に行ったっつー話になると言う。同感の紀彗が考えるが、横に目を移してその疑問が解ける。 

 あそこだと紀彗が言うと、馬呈も横を見てすぐわかった。

 急報!右より敵騎馬出現!右軍が攻撃を受けております!! 蒙恬率いる騎馬隊が襲い掛かる。敵襲に気付くのが遅れ、弓盾の備えができない紀彗軍は強かに攻撃を喰らう。伝令の報告に見えているわ馬鹿野郎と馬呈が吼える。すかさず紀彗は右軍に右向きの陣形を敷かせるよう命じ、併せて黄角の騎馬隊二千に敵の背後に回らせ一機も逃さず討ち取るように伝える。

 黄角騎馬隊が出撃した。 蒙恬がそれを素早く見取り、すぐに部隊に離脱を命じる。黄角は敵の離脱に勘が鋭いなと褒めつつも、ここまで来て我等の離眼騎馬隊から逃げられると思うなと吼えて、追撃をかける。

 敵の追撃を知る蒙恬は騎馬隊の脚をさらに早める。最後尾にいる張呂は味方に早く来いとせかされる。 冷や汗をかきつつも張呂は引き離さない程度に逃げるってのが一番難しいんだよと意味深な言葉を吐く。 そして、それは間もなく明らかになった。

 追っていた黄角は文字通り横槍を喰らった。左からの敵騎馬隊に襲撃される離眼騎馬隊。 追われていた蒙恬が狩場にようこそと馬首を返す。 今度は蒙恬たちが背を打つ番になるのだった。

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