焦燥
#510「新兵達の夜」
初陣の夜、干斗が悔しさを吐き散らす。 きつい選抜試験、辛い訓練に耐えたのにいざ本番になったら何もできなかった。 隣にいる仲間の一人ももっとできると思っていたと悔しさをにじませる。 混なる仲間の一人が傷でうめいた。
傍にいる角と告の兄弟たちは干斗たちを笑う。 俺たち兄弟は五人ずつ敵を倒したと自慢し、他の奴らは口だけだとあざ笑う。
その台詞に干斗が切れる。 告は干斗とやり合おうとするが…、松左が槍で干斗の頭を叩き、その場を収める。 せっかく生き延びたんだから楽しくやれと。
飛信隊ベテラン勢が新兵達の前に現れる。 松左百人将、崇源歩兵長らが新兵達を労いに来た。 尾平伍長が酒を持ってきてくれる。飛信隊最古参として尾平の名が高かった。
新兵に酒を、しかも信の所にある三千将以上しか飲めない酒を勧めて彼らを驚かせる。干斗が大怪我した奴もいるし、正直酒を飲む気分じゃないっすと断ろうとする。しかし、松左はバーカ、だから飲む、俺は生きているぞと意味を込めて味わえと言う。一生に一度の初陣の夜の酒をしっかりと味わえと皆に言う。➡ (*^-^)信の時には沛狼と王騎将軍が松左の役目でしたね。
ようやく新兵達も諍いが収まり、和気あいあいとなる。酒を飲み、慶に裸踊りを勧める奴もいた(誰だかは御察し)。 干斗が崇源に助けてくれたお礼を述べる。崇源は礼を言うくらいならさっさと強くなれ、口だけ干斗とお返事する。
横にいる松左がそんなに新人をいじめるなと話す。そういうお前だって初陣では一人も斬れずに小便を漏らしていただろうと嘗ての恥部を披露する。その場にいた皆が一様に驚く。尾平や新兵達がごぞって崇源本人に問いかけた。
どこで聞いたと松左にきく崇源。松左が俺は初陣にはお前の隣の隊にいたのだと答える。 崇源は十七の時、初陣で小便を我慢していたら奇襲にあったから、それからしばらくは小便もらしの崇源とバカにされたと語る。
「小便もらしの崇源」とは恥ずかしい、俺の初陣よりひどいと尾平が笑いながら初めて崇源の弱みを握ったと揶揄う。が、崇源は勿論その後で馬鹿にした奴等全員を半殺しにしたがねと青筋を立ててにらむ。 すぐに笑いが冷めた尾平。昴が本当に馬鹿だねぇとツッコむ。
干斗ら新兵たちが歩兵長の話を聞き、初陣の険しさを共感できたのか少し安心したと言う。角告兄弟は初陣で活躍した俺たちは歩兵長以上になれると誇る。兄弟に松左は初陣でうまく行き過ぎて次にあっさり死んだ奴等もそうとういたぞと水を差す。 干斗はじゃあ隊長の初陣も結構はずかしかったりしたんですかと問う。皆が沈黙するが、昴が尾平に問う。
あいつの場合は全然違うと尾平が答える。 初陣の蛇甘平原ではいきなり敵の守備陣に突っ込んで後ろから続く俺たちのために大穴を空けた、それで二十人以上はぶっ殺した。えっと新兵達は唖然。
その後も窮地に一人で馬に乗り、敵の大軍に当たってみんなを救ったり、初めて見た装甲戦車をぶっ倒した。➡ (*゚▽゚)ノ羌瘣のアドバイス込みです。 新兵達は茫然。
そして最後に麃公将軍の突撃のどさくさの中で朱鬼だか麻鬼だかの敵の将軍の首級を挙げた。 初陣でそれを全部ですかと新兵達が仰天する。 尾平はそうだ、だから初陣のたった一戦で信は百人将になったのだと。
すごすぎると新兵達は隊長の凄さに瞠目する。 松左はあいつに関しては笑うしかない、だが戦場ではもっと驚かされることばっかりだと言う。 俺や崇源とは十ほども違うのに戦場では誰よりもかっこいいんだ、あいつはねとその場の皆に語って聞かせる。 その頃の信は山民兵たちと酒を飲んでいた。
しかし、崇源や松左は話題が信にそれたと反省する。新兵達がいい話じゃないですかと擁護する。それでも崇源・松左は信ほどではないが初陣ではありえない武功を立てたあの兄弟たちがこの酒の本命なのだと言う。 俺たちですかと淳角淳告が言うが、干斗がすっこんでろブタ兄弟とツッコむ。 隊長たちに仁淡兄弟のことですねときくと、尾平もその兄弟の矢で城壁を落としたと聞いたと。
干斗は凄かったのは小さい兄の仁の方だと言う。山の民が城壁登っても下から撃ち続けて矢の筒が全部空になった、全部撃ち続けたて恐らく一矢で一人倒したんだろうと語る。尾平が驚いて何人斃したんだと言う。
でも干斗は弟の方はからっきしだったそうで、途中で撃てなくなったと言う。崇源・松左はそれは二人共心配だなと言う。二人の意味がわからぬ干斗。松左が二人はどうしていると聞くが、新兵達も列尾陥落以後は二人の姿を見ていないと答える。
淡は幕舎で一人うずくまっていた。戦の後、兄に少しは反省しろとほほを叩かれていた。
貂が馬で見回ると、列尾城について違和感を覚える。そして、一人でいる仁を見つけた。
仁と貂 一人で座っている仁の横に貂が座り、何をしているのと声をかける。貂は初陣でいきなり大役を任せたと謝る。 軍師の言葉に仁はそれは嬉しかったですと言いつつも、戦いが始まると全部のことが思ったのと全く違っててと言う。
貂は震えているねと仁の腕の振るえを見逃さなかった。今までで一番力んで撃ちましたから、それに初めて人を撃ったからと言う。 後者のせいだと貂は答える。仁はこんな弱い奴が隊に入ってがっかりですよねと言うが、貂は何言ってんのと否定し、話し始める。➡ ( ̄▽ ̄)貂も初陣で苦労したしな。
今日の隊内の第一武功は間違いなく仁。それに震えてこそ飛信隊だと言う。その優しさと弱さはこれからも強くなれる証、うちはみんないろんな壁にぶつかってそれを乗り越えて成長してきた、信だってそうだし、俺もそうだと。
俺も最初は怖かった、戦いを操作して敵味方を殺すのも嫌な言い方だけれど慣れるってのはある、それでも怖いのは怖いのだと。だけれども飛信隊はそれでいいと思っている。
「弱さ」があるからこそ本当の「強さ」を知れる、初陣で何も感じず大勢を嬉々として撃ち殺すようならうちでなく桓騎軍にでも入ればいい。その震えは決して恥じるものでは無いと貂は仁の手に触れながら語って聞かせた。
仁は立ち上がって貂にありがとうございますと礼を言う。手の震えは止まらないけれど肩は少し軽くなりましたと。 貂は皆のところにいって少し騒げば元気になるとアドバイスする。➡(o^-^o)それは信のアドバイスでもありましたね
仁はその前に弟を探すと言う。きつく𠮟ったので落ち込んでいるだろうと。 貂も亜兄ちゃんだねと言う。 仁はたった一人の弟ですからと言って歩き出すのだった。 仁を見送ると貂は城のことを思い出して、王翦将軍の本陣に向かう。
その王翦将軍本陣は揺れていた。 将兵たちは動揺しまくっていた。誰も見た者はいないのか、敵は侵入していないのか、騒ぎにするなと麻鉱様が、その麻鉱様はどこにいる、我々も見ていない等々。
兵が貂を見て、何者だ貴様はと一喝する。驚く貂。 そこに駆け付けた楊端和が飛信隊の軍師だと弁護したので兵が収まる。 端和がお前も来たのかと聞く。貂が王翦将軍に話があってきたのにどうしたの、この騒ぎはと聞き返す。 楊端和は私も話があってきたのだがと前置きすると、
その総大将・王翦将軍がこの列尾城から姿を消したようだ と言うのだった。驚く貂。
(´-д-`) 相手無き準備と相手がいる現場(実践実戦)は違う。
新兵であっても歴戦の猛者であっても。
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