乾坤一擲

＃512「鄴の正体」

　李牧、桓騎の予想通り秦軍総大将・王翦は鄴に着いていた。

　秦軍が列尾を陥落させて二日後（王翦将軍が姿を消してから二日後）、ようやく王翦将軍と随従の兵達は目的の鄴城を肉眼でとらえていた。　

　秦連合軍攻略標的。巨大、堅牢に鎮座する趙国王都圏最重要拠点にして趙国第二都市都市「鄴」を目にした王翦将軍の兵達は一様に唸る。
　巨大な望楼に目を奪われる兵。 第一大隊長・亜光は、聞いていたのと大分違うと言う。近年に李牧が大改修を行った噂は本当だと確信する。愚将としては尋常ならざる城に見えますが、王翦様は鄴城をどのように見ますかと問う。

　総大将にして主人たる王翦将軍は完璧とはっきり言いきった。　完璧な城だ、あの城は攻め落とせぬとまで言わせるほどの鄴城だった。　大将の言葉に兵達が衝撃を受ける。それでは今回の連合軍の遠征はと王翦将軍に言い募る。　　しかし、兵達の不安を他所にして王翦は亜光に王都圏全域の地図を出させた。

　先ず王翦は鄴までの間に存在する城は八つで正確かときく。　否と亜光は斥候の話では紀音から北西にもう一つの小都市があると答える。　北西に何里かとまた王翦。亜光は二十里と答える。
　策戦のやり取りをこの場所、趙王都圏深部で戦略を練る大将に兵達は一気に不安が増した。　ただでさえこちらは目立たぬように小隊で来たのに、敵領土内奥深くで見つかれば一溜りもないと気が気でない。

　そして、兵の不安に誘われるように敵兵に見つかる。　そこで何をしている、鄴の兵ではないと気づいた趙兵がどこの隊だと近寄る。　黙って亜光が刀を一閃した。　しかし、音は消せるはずもなく、聞きつけた他の敵部隊が何の騒ぎだと集まり始める。
　王翦の兵らはお早くと主に撤退を促す。王翦自身は亜光に問うと、こちらの倍程度との返答だった。　王翦はよいかときく。亜光は心ゆくまでと答え、敵兵と切り結び始める。自身の背後で血しぶきが届くほどの戦いが繰り広げられる中、王翦は地図を凝視しつつ軍略を練るのだった。　➡ ｱﾌﾞﾈ━━ﾃﾞﾓ、スゲ━━Σ(ﾟдﾟ;)━━!!

　そして、失踪から四日後に王翦将軍たちが列尾に帰還した。

　列尾に戻った王翦将軍は将校たちを集めて号令を下す。

　既に気づいた者もいるかも知れぬが、昌平君の授けた鄴攻略の策はこの列尾で潰えたと。　壁など大半の将校は何を言っているのか分からない。桓騎の言葉を聞いていた信たちは腑に落ちていた。
　よってこの連合軍は私の策で列尾を越えると王翦は明言する。この言葉には信、貂、王賁、蒙恬でさえ驚かされる。
　つまり、ここからは李牧とこの王翦の知略の戦い、鄴を奪うべく全ての兵糧を持ち全軍出陣を命じる。全軍を列尾から動かすのだった！

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　趙の切城、太行山脈山道にある小城　趙王都圏北西の入り口である閼与まで二日の場所で李牧らは秦軍全軍進撃の報せを受けた。➡ （￣ー+￣）閼与とは秦趙因縁の戦地ですわね。昌平君師匠がここで…(´・ω・｀)ｼｮﾎﾞｰﾝ

　鳥からの急報でそれを知る李牧らに衝撃が走る。　なぜ入ってきたのか、脱出口のない包囲網の先に勝機があるのか、それは完全な読み違いだと李牧は思う。　沸騰した作戦会議を李牧は静める。
　そして、列尾を越えた秦軍と我らは本当に両国の命運を占う戦いに突入すると言う。国の命運を占う戦いとききカイネの顔が引き締まる。

　李牧は前にも言った通り、秦軍の狙いは「鄴」であると言う。　鄴がもし落とされると王都邯鄲の喉元まで秦の刃が迫ることになり、大国晋から分裂しておよそ百七十年続いた趙王国が滅亡の危機に瀕することになると。祖国滅亡の言葉にカイネが言葉を失う。

　しかし、この秦連合軍を王都圏内で殲滅すれば、秦は二十万の大軍、大将軍級の桓騎、王翦、楊端和から下に連なる有能な武将たちまで失うことになる。　それはすなわち、秦王嬴政の中華統一の野望が潰えることに直結すると明言する。　咸陽での秦王の宣言を思い出したカイネ。

　李牧は結果は間違いなく後者であると断言する。すぐに山脈西を南下中の扈輒将軍に列尾を再奪取させるように命じ、合わせて王都圏の諸将に包囲戦を仕掛けるように命じるのだった。

絶対に勝つ戦にしか興味がないと豪語した王翦将軍！

o(ﾟДﾟ)っその彼を進める勝機とは如何に！！