乗り越えるもの
#534「日没までに」
蒙恬の仕掛けで麻鉱兵が蘇る。
前線の士気回復は麻鉱軍本陣の活気も蘇らせた。 しかし、蒙恬は喜ぶには早いと楽観を許さない。 今はまだ最低限の準備ができただけ、麻鉱軍がまだ死線上にいることには変わりがないと。
蒙恬は丁陽殿に中央で動かせる隊を見極めて、早急に左右の拠点に援軍を送るようにと指示を出す。 指示の意味が分からず戸惑う丁陽。
左右に送る兵数はできるだけ均等に、だがしかし、右の飛信隊には騎馬を多く送るようにと蒙恬が言う。 飛信隊に騎馬を多く送るの指示に貂は蒙恬の狙いを模索し始める。
士気が戻っても正しい軍略の下で兵を動かさなければ意味がない。日没までに麻鉱軍が生きていられるかはその“軍略”にかかっている。 躊躇も失敗も許されない。これからが本陣の本当の戦いだ。 蒙恬の左翼立て直しが始まった。➡ ( ゚m゚*)アスターテのヤン提督みたいだわ。
秦軍の奴らが急に士気が戻りやがった。伝者が飛ばしている檄のせいだ。 それらの報告を受けながら馬呈は急に士気が戻った眼前の敵の正面左右をそれぞれ見据えていた。
その馬呈軍をみる蒙恬に報告が集められる。 動ける隊に蒙恬は直ぐに左右の拠点へ援軍に出す。 中央からどんどん援軍に出してしまい、本陣の兵たちが不安を抱き始める。
本陣の真正面には馬呈の本隊がいる。今ここで何よりも注視しなければならないのが馬呈の動きと蒙恬以下本陣の面々も分かっていた。 馬呈の強部隊とまともにやり合えない、あれに狙われたらそれなりの戦力を固めないと対処できない。 蒙恬の言葉に本陣の将校たちも動揺する。
だが河了貂は馬呈は本陣には来ないと言う。驚く将校たち。 蒙恬も俺のやろうとしていることが分かってきたかいと言葉をかける。 少しずつと言いつつ、貂は蒙恬に話し始める。
本陣に来た時に楽華隊の本隊は入ってきてなかったんだねと貂。 当然、麻鉱兵が奮起できなかったら一緒に流れに乗って死ぬだけだったからと蒙恬。 左に隠しているから左が陸仙で右が飛信隊なの?と貂。 そうそうと蒙恬は貂に気付きに肯定する。 弟が言った通り気づきが早いと蒙恬は貂を評価する。 貂もそれ以上に入ってくる前からそこまで考えてた蒙恬が怖いと言う。 少し笑う蒙恬だった。
貂はそれとは別に全く部外者なのに何の摩擦もなく麻鉱軍の指揮権を完全に手中にしてる事に驚愕していた。 昌平君先生でも才能の底が見えなかったと言わしめた男・蒙恬に視線が釘付けになった。
見とれるのは仕方ないけれどそろそろ馬呈が動くと蒙恬が言い、貂が我に返る。
馬呈の下に騎馬が集まる。部下はどこを潰すのかと問う。 最初に本陣を示唆されたが、馬呈は麻鉱がいない本陣に意味はないと斥けた。
次に反転攻勢の旗印になっている拠点の左右どちらか? 馬呈の選んだ拠点は…、
飛信隊のいる拠点だった! 離眼兵にとっても劉冬様の弔い合戦、仇の女副長・羌瘣と念願の相手に猛進していく。 本陣からもそれが見える。 蒙恬・貂には予想通りだった。 紀彗本陣でも馬呈の動きは高評価の声が多数。馬呈隊にかかれば瞬殺だと言う者もいる。されど、紀彗一人だけは複雑な表情を浮かべる。
狙われた飛信隊。去蓋から知らされた信は馬呈は俺が当たるから死守をと言う。しかし、羌瘣が即座に否定する。 出てくる前に言われた事、馬呈隊が来たら戦力差がありすぎるからまともにやり合うなと再度念を押す。 蒙恬の言葉を思い出した信は、どうするのかと羌瘣にきく。 足を使ってうまく戦う、そのために援軍に騎馬が多いのだと。 とにかくあの馬呈の本隊をここから引き離せばいい。多分と言う羌瘣。
拠点から外に押し出されていく飛信隊。追いかける馬呈隊。 羌瘣の読んだ通り、蒙恬・貂の作戦の内であった。 意外と器用と蒙恬が上手な擬態を褒める。 羌瘣がいるからと貂。馬呈が十分に右にずれた、背を見せれば追い打ち喰らうから簡単に戻れないと蒙恬が言う。 本陣の面々は次は何をすると問う。
蒙恬は持てる力全て出し尽くすとはっきり言った後、部下の呂多にじいへ合図を送る。合図を受け、じいは左の森の間から楽華隊の騎馬が戦場に横槍を突いた。 本隊三千騎はそのまま陸仙の拠点の援軍にした。
じい率いる三千騎が陸仙と合流を果たす。 膨れ上がった拠点の兵団を陸仙は士気が戻る麻鉱兵と共に最大限前線を押し戻す。 それを見た蒙恬はすかさずこの本陣を移動させる。 あざやかな蒙恬の立て直しを見て、貂は全部救えるはずがないから最初から麻鉱軍の左半分だけ復活させる気だったのだと知った。
麻鉱軍左部分が押し戻してきたのを見て、紀彗が動揺する。
敵の左半分が残るなら二日目以降も戦える力を残すことになる。 この初日で奴らの息の根を止めなければ李牧様の危険を冒した奇襲が無駄になる。
狼狽した紀彗は自ら山を下りて麻鉱軍右半分に戦いを挑む。 遠目で貂が紀彗が来ると言う。 蒙恬もそれは分かっている。
楽華隊を前面に出す蒙恬。部下の田準にじいと陸仙に陣形を組むように命じて行かせる。 麻鉱軍の丁陽・高順から貂まで蒙恬に期待を注ぐ。 蒙恬は好きじゃないんだがねと言うと、日没までと日が傾き始めている空を見る。
...。oо○**○оo。...。oо○**○оo。...。oо○**○оo。
...。oо○**○оo。...。oо○**○оo。...。oо
。・‥…━━━☆・‥…━━━☆・
趙軍中央軍本陣では李牧が盤で策を練っていた。そこに金毛が駆けて、暫しご中断をと言いに来た。その明日の盤面…どうやら前提からやり直さねばならぬ羽目になったと。
一体どういう意味ですと李牧が問い返す。
それが…紀彗からの報告では―“失敗”したと。
夜半になった戦場で信が寝ていた蒙恬を見つけた。信が楽華隊に合図を送り、じいたちが駆けつける。 起きた蒙恬に信はアホみてぇにしつこかったが紀彗軍は退いたと言う。 ついでに思ったよりも麻鉱軍が残ったと付け加える。あっそと蒙恬は答える。
;:゙;`(゚∀゚)`;:゙ まさにキングダム版のアスターテ会戦終盤戦さながらでした。
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