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焦燥

#551「伝者の報告」

激戦の地から遥か南西―秦国王都咸陽では

 秦王・嬴政、左右丞相ら文官らが聴政殿で幾夜も明かしつつ控えていた。当然に介億も李斯も柱にもたれかかって寝ていた。 そこに…、

 次の伝者が入ってきた。 気配で直ぐに目が覚める政。扉の音でたたき起こされた文官たちは遅いぞ、前の報告から何日たっていると怒る。 なぜにもっと王翦将軍は頻繁に伝者を出さないかと猛る。 が、その理由を政と昌文君は直ぐに見抜く。

 伝者は怪我をしており、他の者に肩を担がれて入ってきていた。申し訳ありませんと伝者は謝り、話し始める。
趙王都圏の入り口列尾が封鎖されてから山岳を抜けなければならないのですが、そこにも多くの趙兵がいる。伝者は多く発しているが恐らく皆討たれているのだと。➡ (* ̄ー ̄*)妨害に備えて伝者は多く放つのが基本。
 かつてワーテルローの戦いでナポレオン軍の参謀長スルトが伝者を少なく放ち、ナポレオンから大目玉を喰らった。 この失態が味方の連携ミスにつながりナポレオンが最後に負けた一因とされる。ちなみにナポレオンの名参謀長の地位はベルティエだったがこの戦いの直前に亡くなっている。

 李斯は言い訳はいい、倒れる前にさっさと報告しろと促す。肩を担がれて伝者は嬴政ら重臣たちの待つ軍議に入る。 
 伝者はおそれながら前の伝者はどこまでの戦況を伝えたかと問う。昌文君が何日も前、鄴を囲んで兵糧合戦、連合軍は三つに分かれたまででそれ以降は知らないと答える。
 

 伝者は連合軍は分裂した。桓騎軍は鄴包囲、楊端和・壁軍は撩陽にて交戦、王翦軍は朱海平原にて李牧軍と戦っていると語る。 文官達があの李牧軍と戦うと動揺するが、李斯が昌平君はそこまでは読んでいる、騒ぐなと窘める。

 昌平君はおまえは王翦軍の元から来たのかと問う。 伝者はそうですと答える。朱海平原の開戦から三日目まで王翦軍の中央軍にいました、故にそこまでの戦況しかわかりませんと言う。
 文官らはたった三日目までと残念がるが、介億はそこまで分かるだけでも良しとせねばと言う。昌文君はその戦況を問う。

 「数は劣るが戦況はほぼ互角、両翼の奮戦により中央軍は動かずに、李牧軍にほぼ互角に渡り合っている。 中でも初日に左翼の危機を救った楽華隊、右では玉鳳隊と、三日目では敵の強軍一万とぶつかった飛信隊の奮戦が大きな戦果となっていました。」 

;:゙;`(゚∀゚)`;:゙やはりお友達の戦果と身が心配の大王様 信の活躍に心が動く嬴政。 介億ははからずも主が出陣前に集めた三人が活躍していますなと語る。昌文君も頷く。

 肆氏が状況が複数で分かりづらいが、‟互角”というのは本当に喜ばしい戦局なのかと昌文君に尋ねる。 
 昌文君はそれは…分からぬと答える。 ここ咸陽からでは鄴の食糧があとどれだけ持ちこたえるか分からないからだと。 

 鄴のが先に飢えるなら互角の戦局は吉報、先に軍の食糧が尽きるなら今の戦局はじわじわと李牧に首を絞められていると言うことになると答える。 
 昌文君の解説に李斯はちょっと待てと言う。どちらが先に食糧が尽きるか分からない、そんな博打に王翦は出たのかと疑問を呈する。 政も昌文君もその点に疑問が浮かぶ。
 当然に総司令・昌平君もその点に疑問があった。鄴包囲の一報を聞いた時から引っかかっていた、王翦はそれほどの博打に出る男だったのかと…。

 とにかく分からぬことを考えても仕方がないと昌文君は話しを切り替える。我らの知り得ることは軍の兵糧があと何日持つかだと戦局の根本を議題に上げる。 介億は伝者に列尾を越えて軍は紆余曲折している、送り出した我等も食糧の総量を見失っていると言う。どうなっているかと問う。

 伝者は敵に捕らえられる危険のある我等には最高機密である兵糧の詳細まで教えられていないと言う。しかし、三軍が分散する前の総量は概算で把握していたと。

それを三軍等しく食べ繋ぐ日数に分けられたとして開戦よりざっと十三日分と答える。 つまり、私が三日目までいたのでその時点で残っていたのは十日分であったと記憶していますと報告する。

十日分の答えに李斯を含めた文官達は様子見の態を見せる。 が、嬴政が瞬時に気付き、昌文君も続いてその十日分のここでの意味に気付き、ちょっと待てと言う。 伝者に昌文君はお前が現地を離れて十日分ならば、咸陽にたどり着くまでに何日かかったのかと問う。 伝者は五日と答える。

 「王翦軍の兵糧は今あと五日分しかないと言う事なのか!!」 軍議にいる一同は驚愕の渦に巻かれる。 あと五日で兵糧が尽きる、その五日で李牧に勝たねばならない。動揺した文官達が昌平君に策を問おうとする。しかし、嬴政が今更狼狽えるなと一喝した。

「これまでで最も険しい戦だと分かって仕掛けたのだ。故にあらゆる苦境を跳ね返す人選も準備もしっかりして送り出した。あとは戦場にいる者達を信じるだけだ!!」  ➡o(*^▽^*)o流石の大王様!銃後の役割をしっかりとわきまえてます。     大王の一喝に動揺した皆が動揺を鎮め、改めて大王の英邁な言葉に従う。昌文君、肆氏は大王の意志に当然とばかりに頷く。 嬴政は伝者の労を褒め、下がって休むように言う。

 その伝者はもう一つだけ報告することがあると続ける。 途中で壁軍の絶命しかけていた伝者に託された情報として、焼かれたと語る。 何のことか数人は分からない。

「壁軍の兵糧が焼かれ、楊端和・壁軍の兵糧はさらに数日早く尽きてしまう。」 今度は大王派の昌文君と肆氏ですら驚愕することになった。

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撩陽開戦から八日目

 犬戎軍にすきっ腹の壁軍は容赦なくたたかれていた。第二、三軍は敗走し、第四軍は行方不明の報告が壁にもたらされる。 壁は顔を覆う。➡(p_q*)とことん順風が吹かない壁さん

 夜に食糧を渡される壁将軍。渡す山民族は秦の言葉で昨日よりだいぶ少ないがいよいよ切り詰めていくから許されよ将軍と謝辞を述べる。 壁は滅相もない、口にするものがあるだけでもありがたい。たとえそちらの量の半分だけでもかたじけなく思っていると弱々しく礼を述べた。

 が、山民族の女兵士が半分と言われ、横にいる兄に我らの半分だとそいつは言ったのかと聞く。兄はそうだと答える。 意味が分からない壁にメラ族族長カタリが妹キタリは怒りの膝蹴りを腹に叩き込む。

何が半分だ、こちらはてめえらの半分しか食べていない、みんなは戦の後で野山に入って食い物探して飢えをしのいでんだボケと山の民の言葉で壁を罵る。やめろと妹に声をかける兄カタリ。 将軍がボコられて部下数人が何をするか小娘と怒る。 やるか平地のへっぽことキタリはからかう。またやめろと言うカタリ。➡ ( ̄○ ̄;)!そのためにカタリって名前なのかね?

うちらが普通に食っていたらとっくに食糧はなくなっているんだ、てめえらの下手のせいでと毒つくキタリだが何かの音で兄と共にそちらに視線を移す。壁たちも喚声が聞こえ、奇襲かと息巻く。

 「内輪もめだ。」 カタリは昨夜から始まったと語る。他族の馬を喰うために奪っているのだと。皆、自分の馬は大切だからとキタリは言う。 よく見ておけ平地のバカ共、飢えが進むとこうやって戦どころじゃなくなるんだからなと。キタリが言う間に仲裁役Tが来て、岩玉で威力調停を行う(笑)。

 その様子を丘の上から見ていた楊端和とフィゴ族族長。 このままだと三日でこの軍は崩壊するぞと死王に言う。 死王こと楊端和はどうせ兵糧もあと三日と持たないしなと言う。フィゴ族族長もそれには驚いた。
 楊端和はバジオウに自分の天幕に全ての族長を集めよと命じる。生きるか死ぬか勝負をかける作戦を伝えると。

 

 

Photo(0゜・∀・)ワクワクテカテカ 遂に乾坤一擲の勝負をかける秦軍。先ずは楊端和様から始めるか

 

 

 

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