覚悟
#495「相応の覚悟」
呂氏が相国となり、丞相の席が昌文君で埋められた時に、あの人は言った。
「堪えよ、お前の時代は必ず来る。」
蔡択様の言ったことが遂に日の目を見る!
李斯、舞い戻る!!! 「元呂氏四柱が李斯、参上いたしました。」 法の番人が昌文君に付き添われて正殿の大王に拝謁する。 顔をこわばらせた大王派の面々は一斉に昌文君を非難し始める。
昌文君は騒ぐなと皆を制止する。独断で動いたが既に大王様の了承は得ていると言う。しかし、大王派は呂氏陣営で最も暗躍した、その男のせいでこちらはどれだけ犠牲を出したことか、四柱の他は許せてもこの男だけは絶対に許せませぬと尚も憤る。
非難の矢面に立たされた李斯が俺もそう思うと一言。激怒した大王派一堂がならばさっさと獄にもどっておれと吼える。だがそうはいかぬと李斯はさがらない。
中華統一の話、統一後の制定される法の話をきいて、とてもここにいるお前たちの手に負える代物ではないと李斯は断言する。 それに着手できるのはこの中華でも俺と韓非子くらいだとも。 いきり立つ大王派が一斉に静まる。
また儂に失策をおっかぶせ寄って!!
マタコミックデテイセイサギョウカヨ!o(゚Д゚)っ韓非子じゃなくて韓非だろうが!!
皆の気持ちはよくわかると大王が李斯再任について話し始める。
だが統一後の‟法”とは統一行為そのものの意義を形として全中華の民に示すもの、それほど重大な法作りの前にかつての因縁が何だと言うのかと大王派に自省を促す。 かつての政争で恨みを抱いたのはお互い様でありその時期は過ぎたと心得よと皆に告げる。 誠に秦国一丸となって立ち向かわねば中華統一の宿願は形も残らずに崩れ去るぞと一喝する。 大王の決意を示され、群臣は李斯再任を認めるのだった。
そこに介億と昌平君が参内してくる。介億は英断と讃え、李斯殿は政の手腕も優れているのでこれからきっと必須になりますと言う。その李斯は昌平君を見ると、彼の表情に憂いの色を察する。
介億はさらに昌文君に心から感謝する。自分たちが李斯殿を推しても周囲の疑心を抱かれるため動けなかったと告白する。 昌文君は蔡択様のお導きだと語り、介億もその意を察した。
公式に自分の再任を認められた李斯は、俺のことよりも昌平君が珍しく重い問題を抱えてそうだと皆の指向をそちらに向ける。 大王、介億も驚くが昌文君や他の臣はいつもの昌平君のような気がするがと思う。 だが、当の本人から大王様に人払いと二人きりで相談したいことがあると上申するのだった。
王騎以来二度目 軍総司令官の言葉に皆が驚きつつも正殿を退出する。 残った大王と昌平君。
珍しい、否、こんなことは初めてだと大王は昌平君に尋ねる。他に聞かせられぬ話について問う。
昌平君は来年趙に向けて大軍を発しますと言う。大王は黒羊を拠点とする趙西部攻略のことだと思い、そう返す。 しかし、昌平君は李牧が陣頭指揮を執りだした趙西部からの攻略の糸口が全く見えません と明かした。 驚く大王が黒羊がその攻略の楔なのではないのかと重ねて子細を問う。
総司令は黒羊がその役目を果たすのは間違いない、されど、李牧は今、趙西部の広範囲で突然に複数の城を築き始めました と答える。それは、秦軍の侵攻に何もなかったところに守りの拠点を出現させ、西部により複雑な防衛網を築こうとしていると。
着工は前線に近い側から進められているが、後方にもすでに基礎作りは始まっている。つまり、李牧は前線守備の戦いをしながら後方に防衛線を作り続ける戦略をとってると報告する。
急増した防衛線の一つ一つは決して強固ではないと予測されるも、それでも次々と生まれる防衛線に対して武力突破を繰り返す羽目になり、西部攻略は長期戦に持ち込まれる と言う。
長期戦と言われた大王が何年かと問う。 昌平君の算段は十年だった。 驚愕して腰を浮かせた大王がそれではとてもと口にする。 昌平君も十五年で中華制覇の期日にはとても間に合わないと率直に答えた。 恐らく李牧は統一戦争は短期間でなければ秦国の体力が持たないと気づき。西部の戦いが長引くような長期戦略を仕掛けてきた と言う。
相手は李牧であり最短で十年、そこから邯鄲攻めは数年は必要になり、残念ながら正攻法では十五年かけても趙国を滅ぼせるかどうかとなり、六国制覇の夢は露と消えると。初手で夢の道を閉ざされ、大王は愕然として玉座に腰を下ろす。 必死に考える大王が、昌平君の言葉から疑問に気付く。
正攻法…、ならば正攻法ではない手があるのか!? 大王は昌平君に問う。 伏せたままの右丞相は少し黙ってから、多くの犠牲を伴う奇策中の奇策が一つだけありますと答える。 その中身について大王が問う。
昌平君は簡潔に説明しますと前置きして、その奇策を話し始める。
趙の王都・邯鄲と切り出した昌平君。なぜ邯鄲からと大王が疑問を抱く。 続ける昌平君は邯鄲は西は‟太行山脈”の自然の盾に守られ、南は趙第二の大都市‟鄴”が黄河の岸を守る鉄壁の囲いの中にあるという。大王もそれはわかっている。
李牧は太行山脈より先にある趙西部の防衛に力を入れている、それは山脈が最後の砦でありそこまで敵を近づけさせたくないのが理由であると。 しかし、力を入れているということは気を取られていると見れる。 となれば、
我らは西部攻略を‟囮”として南を駆け抜け、一気に邯鄲の喉元‟鄴”を攻め落とします!!! 文字通り仰天した大王はかすれた声であの鄴を攻めると言ったのかと再度問う。
鄴と邯鄲は目と鼻の先であり、手前の攻略を度外視しての鄴攻めが童の夢想の如き絵であると昌平君でさえも無謀を述べる。しかし、これほど突飛な作戦でなければあの李牧を出し抜くことはできない と言う。 しかしと余りの無茶ぶりに難色を示す大王。
それでも昌平君は鄴を落とすことができればそこから三年で王都・邯鄲を落として趙を滅ぼすことが来ます と断言する。 三年の短さと言われ、大王は血の滾りを取り戻す。
続ける昌平君。 趙の奥深くにある鄴をいきなり狙うのは戦略の定石から大きく逸脱し、策としても下の下、仮にうまく途中をすりぬけ鄴まで進んでも邯鄲周囲にある強力な王都守備軍の包囲攻撃を受けることは必至であると作戦上のリスクを述べる。
その中で鄴を攻め落とすのは至難の業であり、おそらく攻め入る側の我々はこれまでと比較にならぬほどの犠牲が予想され、もし敗れれば‟全滅”をも視野にいれる覚悟が必要ですとの嘗てなき犠牲を大王に上申する。 皆が還ってこないと大王は戦友たちの顔ぶれを思い描く。
作戦の功罪を明かした昌平君はそれでもと大王に六国制覇のために軍職の長としてこの一戦に踏み切る必要があると進言する。
相応の覚悟と共に鄴攻めの準備に入る下知を私にお下しください。 名実ともに王となった政に最初の試練が迫っていた。
( ̄○ ̄;) 勝利か死か!!!
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