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智者の慮は必ず利害に雑う

#514「愚策の極み」

 趙の眠れる大虎・司馬尚が燕軍を大破する! 燕国国境に眠る大虎がいるのなら先に言えと燕将・オルドが心中で李牧にどやした。 それほどに思うほど寡兵で自らの大軍が蹴散らされていた。 敵の新顔にオルドが面白みを感じて自ら立ち合おうとする。 だが急報がそれを止める。

 趙の東部本軍が動いたと知らせが入る。オルドはやっと来たのかと鈍足な敵将・趙泊に毒つく。対処として属将のボッダセイの大軍を使おうとする。

 しかし、伝者は趙泊はこちらではなく東進して我が領内の貍城を攻撃中と報告する。燕軍本陣が動揺する。 
 さらに鳥による火急の報が入る。貍城は陥落して、陽城が攻撃にさらされているので陽城城主・芮様から大至急の救援要請だった。 誰が鈍足じゃいの趙泊軍による貍城から陽城の動きに燕軍本陣は我らの退路が断たれると焦りだした。

悼襄王九年 趙は燕の貍と陽の二城を取った。〈九年 趙攻燕、取貍・陽城〉

燕兵達の狼狽える連問にオルドは平然と受け止める。 愚鈍の趙泊から出た策ではなく、李牧が予め考えていた戦略の一つだろうと言う。やられてもただでは起きないわけかと敗北を認める。

 しかし、オルドはその策の発動があの大男がわずか五千でこのオルド本軍二万を足止めする前提という、軽く値踏みされたことに憤る。 そして、俺の落ち度だと自らの甘い観測を反省する。 奴らの反撃を許さぬほどに北東部を侵すつもりで来たと。

 貍城・陽城が奪われては燕軍本営の戦略に影響するとオルドは二城奪還に引き返すと決める。趙泊の首を取ると全軍に転進を命じる。勿論、ボッダセイも連れていく。 去り際にオルドはまた来るぞと自らを止めた大虎・司馬尚に誓う。

 燕軍が退却した。青歌軍の兵が大将に追撃しますかときく。 司馬尚は青歌に戻ると言う。

 李牧軍が乱城までたどり着く。 王都圏入口の閼与まで一日の地点まで来た。

 城主・憲歩が到着は明日と思っていたのでよくぞこんなにお早くと李牧達を労う。 李牧は替馬の準備、兵達への水と食料を命じる。少し休めばすぐに発つつもりだった。

 準備に取り掛かる前に憲歩が李牧達に燕軍撤退の朗報を伝える。カイネがもう一度きき、憲歩も念を押すように伝える。 何よりの朗報にカイネが李牧に振り返り、李牧も司馬尚の活躍に感謝する。
 傅抵はよっしゃーと喝采を上げた。金毛があとは北東部長官の趙泊がうまく終わらせると言えば、馬呈もこれで燕軍の憂いはなくなったと戦局の好転に安堵する。李牧副官・舜水樹はこれでようやく秦軍だけに対処できると言う。

 早速に李牧は憲歩に列尾を越えた秦軍は今、鄴まで近づきましたかと問う。その問いに憲歩は鳥達の報告からは信じがたいことにと前置きし、紀彗とカイネが困惑する。続ける憲歩の口から鄴に向かわずに途中の小都市・吾多を攻めに行ったと伝える。 ありえない秦軍の動きに驚かぬ者は誰一人いなかった。
                                                                                 

 驚かぬ者は敵どころか味方にさえいなかった!!!  吾多攻めを完了しても信は時間がねえ時になんで小さい城を攻めて一体、何がしたいのかと総大将の意図に困惑していた。 貂も同様であったが、とにかく中に入ろうと信に言う。

 お約束なのか桓騎軍兵士が略奪していた。あいつらまたと信が怒って止めようとするが、蒙恬が制する。 今回は彼らの鼻が役に立っているのだと。鼻の意味に渕と信がわからない。 
 よく見ると彼らは食糧と金をかっさらっていた。 摩論が城の各地点から食糧を手に入れたと桓騎に報告する。桓騎が横にいる王翦にそれを言う。 摩論はしらみつぶしに探さずとも砂鬼の公開拷問で一発なのですが、総大将様の「民を傷つけた者は斬首に処す」の命令を出されたので部下達を黙らすのが大変でしたとぼやく。 黙っている王翦。

 民を殺さずに食料を奪っている。蒙恬は信に話した。 桓騎兵のは一人は民を東の広場に行けと毒ついていた。
 信は桓騎兵は金品も取りまくっていると返す。蒙恬は連中に命令を守らせるための交換条件、手に入れるのは食糧だと答える。 

 だが、それを聞いた貂が激昂した! 兵糧の足しになっても二十万には微々たるもの、ここを攻めたことで半日分の食糧と時間を費やした、本当に食糧を増やすために来たというなら最っ低の愚策の極みだと吐き捨てる。 余りの物言いに信がドン引きする。
蒙恬も貂の言葉に同意していたが、一つだけ気になっていた。 なぜに王翦将軍は厳命までしてこの都市の民を守ろうとしているのかと。 

 東の広場で王翦の前に民が集められた。民の中には桓騎の姿を目にし、殺されると怯えるものが大勢いた。不安を口にする多春を周りが非難する。

 彼らに王翦は言う。 怯えることはない。民間人であるお前達を傷つけることはこの軍の総大将・王翦が一切許さぬと。 怯えていた民衆は敵将の寛容の言葉に思わず首を垂れる。
 予想外の言動に王翦って実は正義の将軍なのかと信は貂につぶやく。貂は考え中。蒙恬は正義とかそういう話ではない、敗戦の民に対して総大将自らのこの対応は「異常」過ぎると感じる。 
 異様な光景に番陽は大殿は一体と王賁に思わず問う。摩論は何ですかこの茶番はとお頭にきくが、桓騎は黙ってみてろと言う。

 王翦はだがこれは戦、心苦しいがそなた達から食糧と共にこの城も取り上げねばならんと語る。食糧のないそなた達は体力が尽きる前に何とか隣の城まで移動してもらわねばならないと謝意をこめて告げる。
 民達は滅相もない、命が奪われないだけでもありがたいし、娘たちが乱暴されることもなかったと感謝を述べる。 王翦はならばすぐに発て、皆の道中の無事を祈ると言う。 民達はありがとうと言って城から去っていく。 

 なんて優しい将軍なのだと王翦将軍に感謝する者。お父が戦死したのに何でお礼を言うのかと子供の声に今はいいのよと宥める母。気が変って桓騎軍が追ってくるかもと怯える者。老人には隣の君城まで歩くのはきついと言う者。行かねば野垂れ死にするだけと言って歩く者等々。

 放たれた城の者達の群れに信は訳が分からずに貂に問うのみ。今考えていると必死に思考を巡らす貂だが、少なくとも違うと総大将の狙いだけ気づく。

 それは主な諸将も同様だった。 王賁、桓騎、蒙恬、河了貂らは察する、王翦将軍の本当の狙いは食糧ではなく、ここに来た本当の目的は間違いなく城外に出された民間人達であると。 それでも尚、貂らは総大将の何のためにそれをするのか見当もつかなかった。

 目的が分からずに民衆の群れを見る貂たち。その彼らの背後から要領は得たかと王翦将軍が声をかける。 驚く貂達に王翦は次の城へ行くぞと告げて、更に仰天させるのだった。

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( ̄○ ̄;)! 漫画『センゴク』の伊勢長島戦を思い出した。鄴を泥船化するつもりなのか?

 

 

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