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上兵は謀を伐つ

#557「関節粉砕」

 飛信隊のあちこちで岳嬰軍に押し込まれる。

な、何だこの敵はっと尾平が狼狽える。 尾平隊も九日目なのに凄まじい攻めだと言っている間に岳岳嬰軍の騎兵に入り込まれてしまった。
 敵の歩兵もやってきた。隊は直ぐに構えるのだが、たちまち敵の歩兵から痛撃を受けた。

 岳嬰は黒羊四日目のあの苦痛を思い出せと檄を飛ばす。これは慶舎様の弔い合戦だと岳嬰が猛れば、兵達の形相が一変した。➡嗚呼、万憶さんもやってたね。。。 

「にっくき飛信隊をっ…殺って殺って殺りまくれぇ」 岳嬰の復讐の炎は兵達に伝染して更に攻撃が加速していった。

 飛信隊本陣に前線全て苦戦と報告が来る。 歩兵団だけでなく騎兵でも羌瘣隊や楚水隊までも下げられていた。歴戦の松左歩兵団も分断されていた。

 予想以上の苦戦に信はもういい、俺が出ると言うが、貂は今は正面の力技は犠牲が出過ぎると待ったをかける。 予想以上に岳嬰軍の士気が高いことに貂は苦悶する。九日目にしてこれだけ力を出してくるとは思いもしなかった。

 後方で観ていた玉鳳隊も岳嬰軍の士気に深刻さを隠せない。 松琢がちょっと飛信隊がやばくないですか、岳嬰軍がと楽観さが消えた。 番陽でさえ今のあの戦いぶりでは岳嬰軍を狙い所にしたのは誤りだったかもと動揺する。

だが、王賁は作戦通りだと味方の苦境にみじんの動揺も見せなかった。すぐに玉鳳隊全兵に出撃を命じる。引き出された岳嬰の首を取ると。 飛信隊本陣にいる信と貂もそれは見えた。二人もすぐに行動を起こす。

 「玉鳳が左から寄せれば岳嬰軍の勢いは弱まる。そしたらっ一気に中央突破だ!」 貂の指示で信は飛麃を率いて出撃する。 岳嬰の首は俺が取るのだと信は吼える。

 残りの趙三将軍を引き受ける亜光軍

「いくらでも攻めてくるがいい趙三将。王翦様より授かったこの防陣、貴様ら如きに破られるわけがない」 
 趙軍の一隊が亜光軍の一隊からこじ開ける。そこから入ろうとするのだが、一隊目は何とか抜けてもこの防陣はここからだと横にいる仲間から声がかかる。 その言葉に裏打ちされたように秦兵が素早く動いて防陣がまた固まった。

「なぜか中に入れば入る程守りが岩のように固くなる。いっ一体どうなっているのだこの防陣はっ」  趙峩龍軍でも亜光の防陣を第一、第二隊が抜けなかった。配下の徐肖でさえも攻めあぐねていた。

 修復力ではないと峩龍は思考を巡らせ始める。 一見岩のように固めた防陣には見えないのにこれほどに持ちこたえられるのかが説明できない。 持ちこたえるどころか三軍の同時攻撃を全くものともせずに防ぎきっている。 何だ、一体どういうカラクリで守っているのだと答えはまだ出ない。 向かいの秦将・亜光は絶対の自信を持っていた。

 孫子曰く、上兵は謀を討つ

 でわ、そろそろ行くかのォと馬南慈が軍を動かす。 側近の一人がいかに我等とてあの防陣の謎を解かねば手こずるかとと言う。 それに馬南慈は李牧様曰く、亜光のこの防陣には‟関節”があるそうだと答える。 本陣の亜光も馬南慈が来るのが見えた。

馬南慈軍に備えて防陣が固く構える。馬南慈軍が第一陣を力でこじ開ける。 入ったかと峩龍の部下が言う。一列入っただけで、この防陣の謎の強さはここから発揮されると趙峩龍は同じことの繰り返しだと思う。 だが…、

 どういうことだと敵味方双方の予想は裏切られた。 馬南慈軍は次々と防陣を突破していった。 それを見る亜光の顔が厳しくなる。味方の趙峩龍でさえなぜ馬南慈はあっさりと中へ入ってゆける―と驚く。

「隊種が二種ある。 あの隊は固い“殻”に徹する小隊とそれらを自在に繋ぎ合わせる“関節”の隊の二種から成り立っています」

 左翼を俯瞰する李牧はカイネに亜光の防陣のカラクリを説明する。 カイネは分からなくて、私には全体がただうごめいているようにしか見えませんと答える。 李牧に“関節”があると防陣が固くなるのですかと問う。

 外殻を破った侵入者に対して“関節”がもの凄い早さで殻と殻を繋ぎ合わせて隊形を的確に変形させている。役割分担を明確にしている分、とにかく対応は早いと李牧は答える。 
 つっかえ棒のように繋いで壁を強固にする場合もあれば、殻が割れぬように関節自身が趙の攻撃の力を分散させる役割にもなっていると。 

 しかし馬南慈はうまく入っていっていますとカイネは言う。 可動くしている“関節”だけを狙っているからです。関節を砕けば殻は繋ぎどころを失い、ただの強固な一小隊となります。  節を失えばただの防陣になるとカイネは理解した。

 狙われていると知った亜光は、防陣隊形を変えると命じる。“柵”を作り馬南慈を止めようとする。

 その動きはカイネや李牧からも見える。 李牧はその防陣はまだいくつか戦術を秘めていそうですと警戒する。 だがしかし、それが出るのを見て待つほど趙は遅くありませんと流れを変えたことを確信する。

 李牧の思惑通り、堯雲が防陣の揺らぎに割って入ってきたのだった。

 

Photo ( ̄◆ ̄;) 趙軍優勢に傾く。。。

 

 

 

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