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上一人の気持ちは下万人に通じる

#576「王翦の下知」

亜光将軍を欠いている朱海平原の右翼。 遂に十日目になっていた。  

 飛信隊が趙軍相手に日が暮れるまで戦い通す。 趙軍が引いてので信は馬上で大きく息をついた。 隊長を気遣い声をかける隊の者達。
 当然だが趙軍も退却する。尭雲、趙峩龍が順次に退却する。馬南慈も退却を決める。将を討ち取られた岳嬰軍も声をかけて退却させる。

亜光将軍不在であっても亜光軍が奮戦した。大将の不在で一気に瓦解する恐れがあったが揺らぐこと無く戦い抜いた所に王翦軍第一軍としての誇りと底力を見せた。

 夜の軍議で貂が明日以降もこのまま行くとは限らないと最初に言った。 亜光将軍不在でも亜光軍は立派に戦った。それでも負担が大きい。これからどうするのかと問おうとする。
 横で聞いていた王賁はそんなことはとうに分かっていると言わんばかりに、やかましい軍師もどきと怒鳴る。お前が仕切るなと言ったはずだといらだちを隠さずに言った。

じゃあ誰が仕切るのさと貂も怒って言い返す。黙る王賁。 そこに亜光軍の将校達が話を切り出す。

我らはいつどんな時でも兵の士気を崩さずに常に力を出し切り戦うように亜光将軍から練兵されている。亜光将軍不在であろうとも明日を戦う。だが飛信隊軍師の言うように、今日ほどの強さを示せぬだろう。   亜光将軍不在という異常事態で心を揺るがぬ兵など我らにはいない。 我らには、この右翼には新しい将が必要だ。

 そう言うと同時に彼らは王賁の前に平伏した。まさかと言う信。 彼らはこの右翼を若君が指揮を執っていただけませぬかと懇願した。
 信はなんでお前らもそうなるのか、麻鉱軍もそうだったがお前達の中にも将校がいるだろうと言う。
 信の疑問に亜光軍の将たちは、今日の戦いぶりや参年前の著陽での戦いでも若君の策で勝利したことは知っている。それ以上の策士にして将は我らの中には見つからない。
 思い当たる信。さらに将達は左翼の将となった蒙恬と我らとでは大きく意味が異なる。王翦様の嫡男である若君が将となればどれほど心強いことか、今のこの苦境を打破して我らを勝利に導ける者は若君王賁様だけです。

 右翼中核の軍から推挙をうける王賁。信たちも何も言わない。感極まって番陽は涙ぐむ。それでも王賁は勝手に盛り上がるな、それを決めるのは総本陣の王翦将軍だけだと辞退する。
 勿論ですと将達はすでに将の交替要請を王翦将軍に送ってありますと。勝手にと信は言う。関常はそれはお前に関係ないなと心中でつぶやく。
 将たちは返事はすぐに来ますと言い、それならば王翦将軍の命であれば受けるのですねと促す。総大将の決定に従うと答える王賁。将達は喜び、よろしくお願いしますと口を揃えて言うのだった。

 程なくして本営総大将の王翦将軍から右翼に下に届いた。 亜光軍の将達が揃って待っていた。 伝令の口から発せられた指令は…。

将・亜光不在の中、右翼の奮戦心から感謝する。だが明日は敵もさらなる攻めに出て来ると思われる。故にこのまま士気を下げずに一層奮戦すべしっ。 以上

 その場にいる者達は愕然とした。なにより将交替がなく、そのまま現状維持が総大将の命令だったのだから。。。
 将の交替はどうなったのかと亜光軍兵たちが問い返す。伝令は分かりません、王翦将軍は何も言わなかったと答える。 ばかなとまで将は口に出る。

 王賁は騒ぐな、総大将の命令なのだから右翼は従うまでだと言うも、目には複雑は色を含ませる。貂が他に何か無いのと尚も伝令に問いただす。王賁は各自陣に戻って明日の戦略を考えろとその場の皆を戻らせた。しかし、皆一堂に総大将の命に不安と疑念を持った。

 貂も信も王翦将軍の指令に不安・不満を抱く。特に作戦立案する貂は憤懣やるかたない。右翼全部から嘱望されているのに将を交替しないのはおかしい。むかつく奴だが王賁の才は蒙恬以上なのにと。 本当に右翼を重要視していないのか、だとしたら大バカだろうとまで言い放つ。 信は小便だと脇道にそれる。

 歩きながら信は王親子の関係について考える。蒙家親子と違うものがある。そんなおかしい関係ならなんとかしろと直接あいつに言ってみるかと王賁陣地の方向に足を運ぶ。そこに声が聞こえ、その方向を向く信。

 会話していたのは関常と番陽だった。 関常が流石にこの采配は理屈に合わないと断じる。これは最早、ただの親子の確執では無いと。 言うなと番陽。 ここまでくると一部で噂になっていることが無視できない。賁様も疑われていることに気づいている節もあるのだと。やめろと番陽。

 王翦様は今でも賁様を自分の本当の子ではないかと疑っている。 関常と怒鳴る番陽。 それが信の耳に聞こえてしまった。

 

Photo(lll゚Д゚) 「キングダム」って親子関係には優しくないよね

 

 

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