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信伝キングダム 588

#「右翼の本営」

 

 

 最後の配給の翌晩 
      
 尾平隊はか細い夜食の時間だった。鍋で煮立ったスープを各員に配分して食べる。尾平はほとんどお湯だなと嘆く。
 隣の者は黙って食いましょうと言うので、尾平も仕方なくお湯を食べる。  本当に味が無い、唯のお湯だったと皆は思う。わずかに馬肉もあったのだが…。
       
 馬肉もこれしかないのか、戦場でもっと落ちていただろうと文句が出る。兵の一人が趙の奴ら去り際に死んでる馬に妙な粉をかけていっていると言う。それもくっさい粉だと。初めて聞いて尾平が驚く。 
 知らない尾平に兵はそれで去亥さんとこの兵数人が死んだ、他も腹おかしくなって倒れているのいっぱい出ているのだと説明する。 そこまで聞いた尾平がこの肉大丈夫なのかと苦言を吐く。別の兵がこれはうちの馬の肉ですと訂正する。 
 でもとその兵は軍馬を食うってことはそれだけで貴重な戦力を失うってこと、それってもう戦わずに終わりに突入していると渕副長が言ってましたと話す。
         
 それでもこれじゃ明日動けねぇぞ、残りの豆干もう少し使うかと尾平が言う。兵はそしたらもう明日食うのが無くなると拒否する。 これでも死んだ竹来と細と北万の分の豆干をいれているのだと言う。 
     
 🍔死んだ仲間の分を食べる。気が滅入ってた尾平隊の顔が引き締まる。そして、無言でその湯を自分たちの腹に流し込んだ。 昴はあの王賁が討たれたみたいだし…明日で終わっちゃうのかなと弱音が出る。
 尾平が昴にお前は何でいつもいつも嫌なことしか言わないと小突く。周りから止めとけ、腹が減るだけだと尾平に忠告する。 それでも王賁が討たれたと皆がしょげるのだが…。 

 

 突然、騎馬数騎が尾平隊の前に駆け込んだ。 尾平たちは敵でも飛信隊の騎兵でもないと騒ぐ。
    
亜光軍大将代理・段茶である!! 飛信隊本陣はこっちであっているかと怒鳴られる。 今、右翼で一番偉い人がなんでここにと皆が狼狽える。 さっさと答えよと段茶が詰問する。ビビった尾平がはい、合ってます、信の本陣はこの先ですと答える。 
           
たわけェ!! 自らの将の居場所を易々と答えるな愚か者がァ!! 軍兵として心得とかない尾平に段茶が叱り飛ばす。 答えたのに怒られるも圧倒的な威圧感に尾平はすっすみませんと謝る。 だが段茶は助かった、済まぬなと一言の礼を述べると直ぐに仲間と飛信隊本陣へ先を急ぐ。
     
 そこにまた騎馬数騎が来た。 渕副長たちだった。渕は今のは亜光軍の将校達かと問う。尾平がそうみたいですと答える。 出迎えに来たのに間に合わなかったと渕は歯がみする。
 出迎えの言葉を聞いた慶が亜光軍のお偉い方がうちに来るなんてどうしたんですかと問う。 
        
 亜光軍だけじゃない。玉鳳の将校達も飛信隊本陣に集まっていると渕副長が答える。尾平隊が一体、何が起きているのか、なんでそんな将校達が急に飛信隊に来たのかと騒ぎ始める。
             
右翼の再編成だ。飛信隊の本陣を右翼の本営として右翼の中心を飛信隊として明日戦うためだ。 渕副長の答えに尾平隊が一斉に驚いた。

 

 飛信隊本陣 段茶将軍、亜花錦らが参集した。既に玉鳳からも番陽が来ていた。 番陽はよく来てくださったと段茶大将代理に礼を述べる。段茶将軍は不本意だが、お前の説得に応じたまでだと答える。
          
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 玉鳳本陣で信は明日どうやって趙左翼に勝つか、玉鳳と話し合いに来たと言う。番陽はならば二隊だけでなく右本営の亜光軍も交えて話し合うべきだと提案する。 お前の天幕に来るように儂が亜光軍の将校達を説得してきてやると言う。 貂も信も番陽の提案を受け入れたのだった。
          
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 飛信隊本陣に来た亜花錦は番陽は思っていた以上にキレ者だったのだなと言う。更に不本意とか言うなと段茶将軍にも言う。 なぜならば…この発想は悪くないと亜花錦は評価していたから。
             
 さァ始めろ飛信隊・信。今よりここが本営の本陣、つまり今からこの右翼の“大将”はお前だ! 仰天する渕に楚水。仕掛けた番陽も胸中で驚いていた。 それに信は…、
       
 テンにいいよな?と問う。 右翼の大将に信がなるとは、河了貂がそのまま右翼軍師としてその重責を一手に担うこと。 渕、楚水もそれを察する。 それに貂は…、
          
やるしかないと答える。よしと確認した信が明日で趙左軍をぶっ潰す軍議を始めるぞと諸将に命じるのだった。軍議は白熱していく。
          
【中央軍王翦軍本陣】
        
 仁王立ちする王翦将軍。報告がひっきりなしに本陣に伝えられる。 
  • 若君の容態についてはご存命以外伝わってきていない。別のところからは飛信隊副長が手当てしている。
  • 右翼が勝手な真似を始めた。右の本営を飛信隊にして、右の大将を勝手に飛信隊信に変えている。
 若君の容態と飛信隊副長の看護の報に幕僚達はなんだそれはと呆れるが、王翦はなにも反応を示さない。しかし、右翼の本営を飛信隊に変えている知らせに王翦は反応する。右翼の勝手な行動に幕僚達から怒る者もいたが、王翦はほおうと何かに通じるかのような声を出す。
 

十三日目の夜 大きな出来事は━━━━(゚∀゚)もう一つ起こる。
 
趙国鄴の城内  秦軍に追い立てられて鄴に集まった避難民達が会話する。 村の一人の沢太の話。
       
 大怪我していた沢太がいる、けが人の集め場に松優が昨夜に行ってみたら起き上がったと言っていたと。 よかったなと喜ぶ相手だったが、包帯の取れたその沢太の顔がどうも沢太じゃない、全く別の顔だったのだと。
      
 鄴で知らないうちに違う奴と間違えたって事かと相手が問う。そうじゃない、鄴に向かう時からその男を沢太と思ってずっと担いで来たってことだと話り手は答える。 
         
 俺たちが赤の小城を追われた時―つまり王翦軍に襲われ怪我人含めて鄴に向けて赤城を追い出された時からあの男は沢太じゃなかったってことだ。
 
 相手はじゃあその男はどこの誰なんだと聞く。話し手はそんなのわかんねーよと答える。じゃあ沢太もどきのとこに行って聞いてくればいいじゃんと言われるが、そうしようとしたらその場にいなくなってたと答える。多分、松優に顔を見られたからだと。
      
 何だその話つまんねーと相手は言う。話し手はつまらなくない、実はこれに似た話が他の小城からきた連中のとこでもあるらしい、怪我で顔が隠れた別人の話がと。 おかしいのはこれからだ。
            
 つまり、この鄴の中に思っていた奴と全く違う何者かが何人か分かんねぇけど紛れこんじまってるって話だよ。そう話し手は結んだ。
 

 

( ̄▽ ̄) アルスラーン戦記でも軍師が語ってましたね。外から門を開けられなければ…と。

 

 

 

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